白楼夢 多島斗志之

 いやあ~!いいもん読みました!おんもしろかった!

 外国モノや歴史モノで重要なのはその場所と時代の空気感を描くこと。
本書は1920年代のシンガポールが舞台ですが、冒頭数十ページを読んだ
だけでどわっと南国の熱気や当時のアジアの雑然としたエネルギーを感じ
られ、これはいけるんじゃない?と期待が高まりました。

 もう、そこからは一気。仕事中も自分の肉体は東京にいるのに心はシン
ガーポール。林田の行く末が気になって気になってウズウズ悶々。

 殺人事件の犯人とか誰が誰と繋がっているのか、黒幕は?とか推理すべ
き点は色々あるけれど、深く考えずに林田の周囲で起こるゴタゴタと人間
関係のうねりに身を任せてしまいました。あ~、幸せ。続きが気になって
わくわくするっていうのはとてつもない快感。

 ひとつ物申すならば、裏表紙に書いてある「鮮やかなどんでん返しが相
次ぐ」はちょっと言い過ぎかな。そういうものを期待するより1920年
シンガポールへのショートトリップを楽しんで結果としてミステリとして
も楽しめた!ってのがいいと思います。

 星4個。