密約幻書 多島斗志之 【しら菊の猫でもわかるミステリ用語解説付き】

 平成元年の直木賞ノミネート作品。

 富豪ゴッディ氏が大金を払ってでも手に入れようとする謎の鞄の中身は
何なのか。そこにはある大物の密約文書が...。

 謎が大掛かりでとても面白いです。物語の時代は75年だけれど謎は日露
戦争時代に遡り、1900年代初頭は小説の舞台としては私の好きな時代。
政治も人々の価値感も工業も近代から現代へと移る過渡期なので面白いと
思う。

 いかにも自分の好みそうな設定なのにいまいちのれませんでした。物語
が遠くで起こっている事のようで、ハラハラドキドキせずに冷めて読んで
しまった。たぶん主役が誰なのかはっきりせず、辰巳にも裕子にもホルト
にも気持ちを添わせる事が出来ずに読んだせいだと思います。この厚さに
収まる着想じゃなかったのかなー。辰巳と裕子とゴッディの物語に絞って
ホルトは削っても良かったのかも。でも基本的に日常系よりも作り込んだ
有り得ない様なドラマが好きなのでこういうのは好みのジャンルです。

 星3個。

しら菊の猫でもわかるミステリ用語解説
・直木賞道尾秀介がノミネートされたよー。)

新人賞といいながら中堅の作家、しかも文芸春秋寄りの作家が受賞出来る
と言われている。意外な人が取っているが、当然取っているだろうと思う
人が取っていない不思議な賞。しょっちゅう発表、とかノミネート、とか
耳にするので「また直木賞の時期か。一年経つの早いなあ」と思っていた
ら年二回の賞だった!とたった今知ったしら菊でありました。^^;

つい「直木五十六」と思ってしまうが正しくは「直木三十五」である。い
そろくじゃねえよ...。

※ちなみに今は新進作家に与える、とはうたわれていない様です。