薔薇の血を流して 皆川博子

 年明けの古本屋には掘り出し物があるという師匠の教えを受け、正月
早々B○○K○FFに突撃して見つけた一冊。

 タイトルからしてもう皆川節炸裂です。鼻血出そうに濃ゆい。三つの中
編で描かれるのは女の狂気。最初は表題作の主人公はるなが他の作品の登
場人物に比べればかろうじて普通の(薄い)人に思えたけれど終わってみ
れば一番狂っていた。命の危険をかけたバイクレースなんて自分の中の狂
気を育てていかなければ出来ないのかもなあ。執着とか熱狂とか、強い思
いと狂気は紙一重。そんなあやうい部分が濃密に描かれています。

 もう一つ印象に残ったキーワードが「闘争」。以前読んだ他の作品でも
学生運動が出て来ましたが、本書でもアイルランドの暴動や日本の三里塚
闘争が登場します。皆川作品を読む上で戦争や闘争というのは重要なキー
なのだなあ...。

 星3.6個。