連載小説 ドブなロク道<いけずの料理研究会>流水館へ 第三話

※諸事情により小説仕立てでお送りします。小説はウザイ、要点だけ追い
たい、という方々のため要点を太字で記載しますのでご活用下さい。※

■■■第三話■■■
 一日半。二度目の朝を迎えた。早速ドブ□クチェックへ向かうと、既に
起きぬけでスッピンの白菊先輩が樽の前にいた。しかし化粧ひとつで人の
顔はこうも変わるものだろうか。速水もこみち速水いまいちになる位違
う。

 蓋を開けると芳醇なお酒の香り。蓋の裏側には水滴がいっぱいついてい
る。昨日は水面は静かで耳をすますとしゅわしゅわ音がしていたが、今朝
はコポ、コポ、と泡が表面ではじけるのが目で見えるようになった。

 イメージ 1

 丸二日。なにせ香りが良い。何度も蓋を開けてスーハースーハー匂いを
かいでしまう。さわやかな日本酒の香りがプンプンする。米粒のかどがと
れてトロリとしてきた。少しグラスに取って味見をしてみる。過去に飲ん
だ濁り酒は皆甘口だったのでこれもきっと甘いだろうと思ったのに、かな
り辛口であった。濁ってはいるけれども清酒の様な味わい。
すこしふわ〜、っとして喉の奥が熱くなる。

 もう、これ完成ではないか?自家製ドブ□クの発酵時間には諸説あり、
3〜4日だとか一週間だとか数週間だとか色々言われているが、まだ二日で
ある。早すぎやしないか。いつ絞る(漉す)かの決定が難問だ。まあ、そ
の決定権は下っ端の自分にはないのだろうな。

**********

 二日半。三日目の朝を迎えた。ドブ□クは昨日の晩と大きな差はない。
美味しそうな日本酒の香り。プチプチ発酵音は聞こえるが表面は静か。容
器をゆするとコポコポガスが出る。これがある程度発酵の収まった状態な
のか、これから活発になるのか見当もつかない。

「そういえば、前動君起きて来ないね」
酒に夢中で今まで誰も気付かなかった。
「三本松、お前...、」
「了解っす!!」
鳴川先輩が僕に様子を見て来い、というのは予想がついたので僕は全部を
聞かずに二階へ上がって行った。
「せんぱーい!前動先輩!朝です!起きて下さい!」
部屋は静まり返っている。不審に思いノブを捻るが鍵がかかっていて開か
ない。いつまでも僕が降りて行かないので心配した鳴川先輩と白菊先輩も
やってきた。
「返事が有りません。鍵がかかっていてドアも開かないんです。」
青くなって叫ぶ僕に鳴川先輩が言う。
「残念ながらわが料理部には鍵開けの名人はいないので、ここは古式ゆか
しく体当たりだな」

せーーーのっ、ドーーーン。せーーーのっ、ドーーーーン。

何度も鳴川先輩と二人で体当たりを繰り返し、諦めかけたときようやくメ
リメリと鍵が壊れる音がしてギイイイ、という重たい音と共にドアが開い
た。

 そこには前動先輩が頭から血を流して死んでいたのである。

 きゅ、救急車、いや、けいさつ...!携帯電話を取り出した僕を鳴川先輩
が静止する。
「三本松、考えてもみろ。今警察呼んだら俺達がドブ□ク作ってるのがバ
レるだろう。罰金だ処罰だよりも実験が頓挫するのが俺は嫌だ。酒が仕上
がるまで通報は待て」
意外と体育会系性質を持つわが料理部。先輩の発言は絶対だ。見ると白菊
先輩がエアコンを暖房から冷房に切り替えている。遺体の状態を極力保存
しようというのだろう。僕達三人は前動先輩に手を合わせて部屋を後にし
た。

 事件が起こって動揺して、記録どころではないのでとりあえず状態だけ
完結に記す。
丸三日経過。撹拌と味見。端麗辛口。

この物語はフィクションです。画像はCGです。登場する白菊と実在の

しら菊は別人です。

 ※日本では無免許でアルコール度数1%を越えるお酒を作ることは自家
用であっても違法です。
https://www.blogmura.com/img/www88_31.gif
ブログランキング・にほんブログ村へ(文字をクリック)