秋の牢獄 恒川光太郎

　未読の作家さんが周囲で話題になっていると焦らね？

　というわけで初恒川さん。お、これは嬉しい誤算というか。イメージと
違う作風でした。ちょっとSFチックで、幻想風味で、短さが効いてて、穏
やかで、非常によろしかったです。もっと若いノリの作風だと思ってた。
お年の割に枯れてますね。（褒めてます。念のため。）このテの不思議設
定系は発想するところまでは出来ても巧くまとめるのが難しいと思うので
すが、どれもソツがなくきれいな終わり方。

　連作短編ではないけれど、ちょっと似たテイストのテーマで纏めてあっ
てバランスも良し。このリピート設定はよく見るけれど、タイムトラベル
同様SF界ではみんなで共有して色々書きましょう、のスタンダードテーマ
なのでしょうか。腕が試される勇気の要るネタですね。

　奇天烈な状況に置かれる各話の主人公が、皆不思議とじたばたしないで
淡々としている。それが静かな文体とマッチして、独特の作品世界、空気
感を創り出しています。

　星3.6個。
　

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