夜市 恒川光太郎

 いや〜、これは凄い!驚きました!

 クールでスマートな幻想小説。ホラー的なぐちょぐちょスプラッタも、
スリラー的な怖がらせるための大仰な仕掛けもなくて、静かに広がる作品
世界。興味が有る方はお読み下さい。怖がりたければどうぞ、と言った感
じ。こう読め!こう感じろ!という押し付けがましさが全くない。この読
者との距離感は恰好良いな〜。何か突き抜けたものがあります。

 発想もとても良いのだけれど、構成も上手い。伏線の貼り方や、種の明
かし方も丁度良いので、絶妙のタイミングで「あっ、もしかしてコレって
そういうこと?」と気付けて、数行後で「ほら〜〜〜!!やっぱり!」と
来る。このタイミングはこれより後でも先でも不粋なんだけど、うまいと
ころで気付かせてくれるんです。これほんとにデビュー作?信じられん。
ベテランの書いたものみたいだ。「夜市」と「風の古道」二編とも甲乙つ
け難いです。

 星4.2個。