黒百合 多島斗志之

 うわはーーーー。やられた。

 昨年秋、冴さんよりお勧め頂いた「黒百合」。早速予約したけれど回っ
て来るのが先だったので待ちきれず、既刊ですぐ借りられる多島作品を端
から読んでゆくうちとても気に入ってしまい、いまやすっかり多島ファン
のわたくし。満を持して「黒百合」が回って来ました。わくわく。

 1952年の六甲山での子供達の交流を軸に、時折挟まれる過去の物語。
思わせぶりに重要事項が隠されていて解らないことだらけ。なにがどう物
語に関わってくるのかじりじりやきもきしながら読みました。

 これはいいわ〜。アレです!「百楼夢」と「感傷コンパス」を足した様
な面白さ。(二で割らない!)感傷コンパスのほのぼのとした子供世界観
に百楼夢の大人な怪しさが加わったら最強でしょう。さらにミステリ的な
ビックリ!もですよ。まんまとしてやられた。ミスディレクションの罠に
ガッツリはまりました。「騙されたい」というミステリ読みの気持ちを充
分満足させてくれます。読み返すとわかる細かい伏線の数々にも感嘆。

 相変わらずのクールで淡々とした筆致が素敵です。おっとりした関西弁
もいい雰囲気。ひとつだけ難を言えば彼等、14歳にしては子供っぽすぎな
いか。昔の子はこんなもん?

 星4.3個