虐殺器官 伊藤計劃

 先日皆川ファン仲間のbeckさんが感想を書いておられた本書がとても気
になり、図書館で借りて読み始めました。途中作者の来歴に興味を持ち、
ぐぐったところ、訃報ドットコムがひっかかってきた!え?うそ!作者、
私より年下でしょう?なんと、beckさんが感想を描かれる二日程前に亡く
なられていたのです。ううう、ショック。

 ストーリーの面白さでぐいぐい引っぱって行くのではなく、会話や情景
描写等のディティールの丹念な積み重ねから物語を浮かび上がらせるって
いうのが良いですね。悶々、延々と悩む主人公が考えたり過去を振り返っ
たり人と話したり、それらの細かい部分のひとつひとつがとても良く考え
られていて面白いし、様々な事象への考察も鋭く興味深いので淡々とペー
スを乱さず読めてしまう。クールで乾いた文体も好み。

 近未来の軍事SFということで、もっとハードな「男子の読みもの」だと
思っていたけれど、意外とメランコリックで危うい主人公。思わず「心配
する姉」の心境で見守ってしまった。

 ああ、残念。この若さで...。惜しいです。

 星3.8個。