ロスト・チャイルド 桂美人

 横溝正史ミステリ大賞を首挽村の大村さんと同時受賞した本書。いかに
も横溝的な世界観だった首挽村とは全く違う方向性でなかなか面白い作品
でした。

 とにかく説明不足で解りづらい部分が多くて残念。例えば登場人物が事
情を知る人に話を聞きに行っても、その人がそのことを知っているという
ことをどこで彼等が知ったのかの説明がないので展開が唐突に感じられて
「え?なんでこの人に会いに?」と戸惑ってしまうのです。

 荒削りさや欠点は有りながらも妙に神と速水の行く末が気になって最後
まで引っぱられてしまいました。美形の監察医、神ヒカルという名前も設
定も漫画的でベタなキャラクタに序盤は引き気味でしたが、いつの間にか
感情移入してしまう吸引力があったと思います。レオ・マオの存在の意味
やヒカルの兄の想い、全てが明かされた時は思わず胸が熱くなりました。

 余談ですが、この人どうやら二作目ははずしちゃったらしい。受賞作の
次っていうのは難しいね。

 星3.5個。