耳をふさいで夜を走る 石持浅海

 いや〜!!きたきた!やってくれました!!今回はくろ菊出ませんよ!
斬りません!褒めちゃいます。

 冒頭からわけのわからないイッちゃってる価値観炸裂の殺人志願者。覚
醒とか意味わかんないし!ブレることない確固たる意志のもとに「殺さな
きゃ!」と突き進む主人公の軌跡。

 今まで他の石持作品でひっかかっていた部分が全て吉と出ました。持ち
前のまわりくどい文章がこの主人公の一人称としてとてもしっくり来るし
最初から「あ、この人かなりキちゃってるな」と思わせるのでいつも感じ
ていたいい大人がこういう判断をするか?の様な登場人物の思考の不自然
さも全く気にならない。

 こういう路線ならこういう路線だって最初から言ってくれればいいんで
すよ。石持さんは妙な価値観の人物を狙って書いていますよ、と。それが
「胸を打つ感動と美しい謎」っていう帯をつけたり対人地雷をテーマにし
て社会派風を匂わせたりするから混乱する。え、ここ変だけど、突っ込ん
じゃいけないの?笑うところじゃなくて感動ポイント?とストレスになっ
ていたわけで。最初からイッちゃってる人達のお話だよ、と言われればそ
れはもう「まじかよー!ありえねー!」と楽しめるのです。そう考えて読
めば過去にさんざんケチつけてきた作品達も違った楽しみ方が出来そうな
り。

 星3.8個。