ロードムービー 辻村深月

 辻村さんの描く大人の物語が読みたいなあ、と思っていたのですが、今
回も子供と大学生が主人公でした。

 表題作が一番好きです。軽いジャブ的なミステリ仕掛けには途中で気付
いて「ふふっ」とほくそ笑みました。この仕掛けがなくても短編として成
り立つのだけれど、っていうサービス精神はいいと思う。

 いまいち何が言いたいのか良くわからなかったのが「雪の降る道」。こ
れ、ちょっと説明不足じゃないですか?ヒロちゃん、とかスガ兄が唐突に
出て来る印象...。

 デビュー作から非凡の才を見せつける作品を連発し、大注目作家となっ
た辻村さん。瑞々しい痛さを描かせたらピカ一、でしたが、その若さ故の
不満もありました。作品に作者の主張が入り込み過ぎて時としてウザかっ
た。そのあたりのバランスがだんだん良くなってきたと感じます。きちん
と作者が神の目線で物語を俯瞰していて昔よりもバランスが良い。これで
デビュー当時のピリピリした痛みも亡くさずに書き続けられたらもんのす
ごいことですが、大抵上手くなるにつれそういう部分って減って行っちゃ
うんだよね。辻村さんはどうでしょうか。

 星3.5個。

 ※と、感想を書き終わって他の方の感想分を読みに行って知りました。
本書は「冷たい校舎の〜」の続編というか外伝というか、スピンオフ?登
場人物がリンクしているのだそうです。そうか〜!全然わからなかった。
ていうか冷校の人物名なんて全部忘れてるがな。わかって読めば「雪の降
る道」も楽しめたんですね、きっと。