夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 カズオ・イシグロ

 満足しました!!短編でもイシグロはイシグロだ〜!新作をとても楽し
みに待つ作家、カズオ・イシグロ初の短編集です。

 音楽と夕暮れをめぐる5編の物語。本当に洒落た物語を書く人だなあ。
ペーソスあり、ユーモアあり、描かれている大人の男と女の機微も面白く
あくまで筆致はクールでサラリとした軽さがある。そしてちょっと楽しめ
る仕掛けも。完璧に好みのど真ん中な上に、どっこも減点するところが無
いのですよ。


 彼のどの作品も大好きなのですが特に好きなのは「充たされざる者」と
わたしたちが孤児だったころ」。この二作は本書の感想で述べたイシグ
ロの長所に加えて、カフカカミュを思い出させる不条理さやなんじゃこ
りゃ!どうなってるの?という不思議さ、登場人物が翻弄されるスラプス
ティックな味わいがあって本当に私が小説に求める全てを兼ね備えている
大大大好きな小説なのです。

 長生きして一つでも多く作品を書いて欲しいです。もう、ホント、彼は
神、世界の宝だと思っています。

 星5個。