グローバリズム出づる処の殺人者より アラヴィンド・アディガ

 先日久々にカズオ・イシグロを読んで、コンテンポラリー海外文学を続
けて読みたい気分になったので、イシグロも受賞しているブッカー賞08年
度受賞作品を読んでみました。

 主人を殺して一介の運転手から起業家にのし上がった「わたし」から中
国首相に当てた書簡という形式を取った小説。インドの歪んだ格差社会
描き出した事が評価された様ですが、そのあたりの鋭さ、深さは想定の範
囲内。それよりも私は鬱屈とした何かを溜め込みながらも淡々としている
語り口が夢を持てない経済状態にいる層、不況に育った世代の倦怠感をリ
アルに描き出している所が良いと思いました。前半の冗長さも「このレイ
ジーさがインド?」と思えなくもない。

 それにしてもこの邦題にしたことは大正解。原題ザ・ホワイトタイガー
のままだったら絶対手に取りもしなかった。

 星3.5個。