完全恋愛 牧薩次

 行きつけの本屋で平積みになっているのでよく目にしていたのですが、
タイトルとガーリィは網中さんの装画から自分とは無関係の恋愛小説だと
思って毎回素通りしていました。ら!本ミス大賞取った!え?てことはミ
ステリなの?牧薩次は某有名作家の別名?ああああ!(気付いた。)あわ
てて予約。

 物語の始まりは戦中。少年究(きわむ)は疎開先で出会った画家の娘、
朋音に恋をする...。

 いやあ、面白かった。結構突拍子も無い事件に、ぶわはっ!とむせそう
なトリック。大オチにはあああ!そうか!と膝を打ち、タイトルの意味深
さに納得。ある意味あの人が一番の罪人(つみびと)だわな〜。

 正直この第三の事件のトリックはミステリ界ではもう禁じ手だと私は思
うし、他の人がやったら文句をつけた筈。でも本書にそういう不満は全く
感じませんでした。何故なら物語が、究と周囲の人間の人生が面白く、真
相が気になって読む手を止めさせない。小説としてとても良く出来ている
ので満足なのです。

 そしてその第二の事件のぶわはっ!も第三の事件の禁じ手も、新人作家
が真剣に書いたものならば「おいおい、それは...」と思うけれど、大御所
作家のちょっとした遊び心と捉えれば全く問題なし、なのでは。私はかな
り楽しめました、これ。

 と、えらそうに書いていますが実は今まで一冊も読んだ事ありません。
この人...。

 星3.8個。


↓網中さんの装画はこちらで御覧下さい。いつも色選びのセンスが素晴らし
い人です。上手いわ〜。