ぼくが探偵だった夏 内田康夫

 少年時代の浅見光彦。サービス満載の一冊でしたねえ〜!昨年数冊浅見
モノを読んだだけのにわかな私でも充分嬉しくなる登場人物達でした。お
お、あの人とここで出会うのか。^^そして、今は亡き浅見の周囲の人達
がまだ存命でもあり、その後その人に起こる事を思ってしんみりしたり。

 避暑地軽井沢での浅見少年の一夏の事件譚。「女は嫌いだ」と言う浅見
少年に、そうそう。この位の年頃って男女仲悪いよね〜、と頷きました。
自分が大人になってこういう感覚忘れてたわ。

 長く書き続けたキャラだけあって浅見少年、もうどっから見てもちゃん
と浅見。この子が大人になってああなる、っていうのがしっかりピンと来
る。人間像にブレがないのは一番のリアルですね。作者の中でも読者の中
でも浅見が生きている、っていうのいいなあ。

 麻耶さんとか竹本さんとか結構トンデモ本も排出しているこのレーベル
ですが、内田さんの切り口はさすが正当派。地味だけれど真っ向から勝負
の大人の感禄を感じました。小手先で捻らないといいますか。少年がどう
してこの出来事に興味を持ったのか、どういう点がおかしい、変だと感じ
たのか、どこから真相に近付いて行くのか、トリックや犯人宛てよりもそ
ういう浅見の感じたことが丹念に描かれています。

 内田さんの願いや狙いは伝わって来ましたが、この地味さはゲームや漫
画はたまた現実の事件でも、過激なものに慣れた今の少年少女にはあまり
訴えかけないかもしれません。ジュブナイルだからこそもう少し毒が欲し
かった。子供は「健全じゃないもの」にこそ興味を持つと思うので。そう
考えると麻耶・竹本の狙いは案外良かったのかも。残念ながら本書もジュ
ブナイルといいつつも既存の浅見ファンの大人達の方が楽しめる仕上がり
になっています。

 星3.6個。

※おことわり※
 もはやこのレーベルは子供向けと言いつつも実は大人ターゲットという
観点で評しても良いのでは?という気が随分前からしていますが、地元の
図書館では児童書コーナーにあるので、あくまで児童書、という見地から
感想を書く事にしています。自分で決めた縛りです。あしからず。