メモリアノイズの流転現象 上遠野浩平

 ヤバい人にはまってしまったかもしれません。

 上遠野さんは多作だし、シリーズ同士がリンクしているということは聞
きかじっていたので、避けていました。読みたい本が全く消化しきれてい
ない現状なので、ここから新たに作品数の多いシリーズ物にはまっている
余裕は正直ないのよ。でもついうっかり事件シリーズを読んでしまって以
来、どうもこの人の作品が気になって気になって、本書に手をだしてしま
いました。

 お、面白かった...。

 しかもこれ一冊では全然何が何やらわからないし肝心なことも解明しな
くて後をひく。この人はファンタジーとかSFとかミステリとか、そういう
要素のさじ加減が巧いです。事件シリーズもあれ以上ファンタジーに寄っ
たら、本書もこれ以上SFに寄ったらミステリ読みの私にはきついんです。
巧い所で留めてるの。

 千条が歌いながら走るシーンが秀逸。その情景で「うわー、なんだかよ
くわかんないけど面白い!」と完全にやられてしまいました。そして早見
が子供を通じて麻由美に伝えた言葉にジーンと来て、ああ、やばい、面白
かった。アメヤがなんなのよ?って、それを追求するためにあと何冊読ま
なならんのじゃ。主要作品をひととおりおさえて「酸素は鏡に映らない」
を再読して「これはこういうことだったのかあ!」と膝を打ちたいです。
普段の読書と併行なのでいつになるやらさっぱり見通しは立ちませんが。

 星3.7個。