密室殺人ゲーム2.0 歌野晶午

 冒頭から見覚えのある名前に戸惑いました。あれー、確か前作で...。

 ふふふ。さすが歌野さん。面白かったです。何一つ謎は看破出来なかっ
たけれど、登場人物と一緒になって悩みました。物語とかストーリーとか
人間関係とか、そういうことに気を取られずにトリックだけを見つめ、考
えることの贅沢さよ!日頃ミステリのトリック以外の部分に重きを置き、
小説としての、物語の完成度も求めている私ですが、本書にそんな野暮な
ことは言いません。勿論これが誰にでも許される手法ではないと思います
が、歌野さんだものー。

 殺人をゲームとして実行し、トリックをチャットで当てっこするという
有り得ない設定。でも、それを「有り得ない」とか「小説としての物語性
に欠ける」とかではなく「トリックだけに注目できて贅沢」と感じさせる
ことに成功しているのはトリックの完成度ゆえか。肉付けして普通の小説
仕立てにすれば一作書けそうなトリック(そうじゃないものもあるけど)
を惜し気も無く沢山盛り込んだことに対するお得感すらありました。

 それぞれの章タイトルも良いです。「相当な悪魔」って!ぷぷぷ!

 星3.8個。