探偵小説のためのインヴェンション 「金剋木」 古野まほろ

 作を追う毎にアクが抜けて薄まって来ている印象の陰明師コモとかるた
名人あかねの探偵シリーズ。終盤の謎解きのややこしさで多少読むスピー
ドは落ちますが、それまではするんするん読めてしまいます。方言も、漢
字に意訳ルビの「まほろ語」も、とーっても少なくて(実予弁は保丞が孤
軍奮闘)読み易いのは良いのだけれど、コテコテまほろ本を求める向きに
は若干の物足りなさが。今回かるた試合もないしなあ。

 本作のテーマは吸血鬼。吸血鬼と、政岡。政岡って歌舞伎を知っている
人にはとてもポピュラーなキャラクタなんですが、えっと、歌舞伎にはあ
りがちなわが子を犠牲にして主君に仕える的な...。上手く説明出来ていま
せんが察して下さい。吸血鬼の政岡は歌舞伎の政岡とは全然違う印象です
が、きっと何か示唆的なものがあるはず...。

 毎度のことですがかなりきっちりと細かい謎解き。吸血鬼は苦手なもの
があるのでそれにより密室が発生してしまう。でも、人間はそこを通れる
という捻ったややこしさが力作です。このシリーズのうちでは一番おすす
めかも。でも、ちょっと読み終わって「あれ?」って思う部分があるので
返却前に終盤を再読する予定。

 星3.8個。