亡羊の嘆 鬼籍通覧 椹野道流

 ひゃほ〜!当たりだった!

 鬼籍通覧、というシリーズタイトルは図書館でよく見かけてはいて、鬼
という字を見て苦手な神話伝承物だと思い込んで避けていました。鬼じゃ
なくて鬼籍じゃないか!法医学ミステリでした。作者は現役法医学者との
こと。

 とてもバランスの良いエンタメ小説でした。キャラも立ってるし、女性
法医学者を主人公に据え、先輩後輩に女性読者が喜びそうな男性キャラを
配す。これ王道。間違いない。絵的に派手な殺人事件、探偵役が謎解きを
するちょっと前に読者にうまく真相を気付かせる明かし具合、巧いな〜、
と唸りました。食べてるシーンも美味しそうだし料理している描写も良い。
後書きも効いています。ああ、バランス感覚のある人だ、と思いました。

 難を挙げるとするならば、最後のもう一捻り、が蛇足に思えたことと、
主人公が作者と同じ名前ということでしょうか。すいません。個人的な好
みですが、作者と主役が同じ名前なの、嫌いです。(深月とか...。)読者
が登場人物に感情移入したいな、と思った時に作者の名前は邪魔なだけだ
と思うのですが。

 ウィキペディアでラインナップを見る限りこの方はラノベ、エンタメ系
作家さんの様ですが、もっと社会派に寄った重厚なものも読んでみたいで
す。そういう予定はないのでしょうか。

 星3.8個。