決壊 平野啓一郎

 新年一発目の読書感想は年末の読了物から。

 表紙デザインに組み込まれる様にあらすじが書かれているのだけれど、
これは書き過ぎだな〜。あの人が殺されることを作中で驚きたかったです。
感動の大作。という煽りもどうかと思う。本書を読んで皆色々思うだろう
けれど、感動とは若干種類が違うのでは。

 平野君は読みにくい印象があったけれど、本書は最後までぐいぐい読ま
せます。事件は派手だし、同僚相手にランチしながら哲学的な話をしちゃ
う祟の人物像も現実味は薄いけれどフィクションの主人公としては興味深
く面白い。

 ミステリ読みの私は「ここで新登場人物かよ!」と突っ込みそうになっ
たけれど、違うか。平野君はエンタメじゃなくて文学派なのだから、これ
はミステリ的趣向も凝らされた現代文学、ととらえていいのでしょう。

 最終的にミステリ的落ちをつければ文学性の高いミステリということで
私的には点が高くなるけれど、文学的に落としてしまうと「なんでもあり
でずるい」と思ってしまう。文学にはミステリの様なルールや制約がない
から。文学的満足度が高ければミステリはオマケ要素だから、という評価
も出来るのだけれど、そのどちらにもなれず、私にはちょっと中途半端に
感じられました。

 星3.6個。