小説新人賞は、こうお獲り遊ばせ 下読み嬢の告白 奈河静香

 「お爺様のツン」には思わず声を出して笑ってしまいました。移動中読
書には向きませんのでご注意。笑。

 小説やノンフィクションの新人賞の下読み、実際の選者が読む前にふる
いにかける作業をされている方のエッセイです。小説読んでお金が貰える
なんて良いよね、なんて思っているあなた!そんなに生易しいものではあ
りません。だって、私だったら嫌だよ。仕事から帰って来て疲れていると
きに「さあ、下読みのバイトやるか」って読み始めたブツが「オッサンの
書いた若いおねーちゃんと温泉旅行で殺人事件な妄想エロミステリ」とか、
「落ちなしカニバリズムヘタクソホラー」だったら疲れ倍増しちゃうよ!

 応募作は本当に百花繚乱。ミント蘊蓄たっぷりのミステリとか、何故か
原稿用紙の上三文字を開けて書かれた時代小説とか、個性的な、ちょっと
愛すべき作品が沢山紹介されています。落選レベルでもこうしてネタに出
来る様なものならまだしも、勿論この何百倍もネタにもならぬ箸にも棒に
もかからない作品の海を泳いで来られた訳で、下読みさんのお仕事ぶりに、
わたくし感服いたしました。

 『駄作を通してしまうことはあっても、傑作を落としてしまうことは、
まずない。』なんとも重みの有る印象的なお言葉です。

 星4個。