償い 矢口敦子

 本格ミステリシリーズが気に入ったので、早見江堂の中の人を読んでみ
ました。

 ふ、ふつーだ...。

 あの三部作を書くにあたって別の筆名を要した位だから早見江堂と矢口
敦子は全然違う作風なのだろうなと予測してはいましたがこんなに「至っ
てまとも」だとは。

 野宿者となった元医師がある疑念を抱いて連続殺人事件を追う、という
のが柱のストーリーです。医師時代の後悔、家庭生活の失敗、過去の事件、
と医師の周辺だけでも盛り沢山。更に少年の物語、それぞれの被害者や刑
事の周辺の事象、とエピソードが多すぎてもったり重くなってしまった印
象。もう少し整理した方が美しいと思いました。

 こういう至ってまともな感動風味のミステリを読むといつも自分の好み
は王道ではないのだなあ、と再確認します。だって、早見江堂の方が好き
なんだもん。本書の方が良作なのは解るけれど、好き嫌いはどうしようも
ないのよね。

 いや、しかしこういう作品で評価された人がよくぞあれだけはっちゃけ
たよなあ。(本格ミステリシリーズ)何か鬱憤がたまったのだろうか。日
頃の執筆で。

 星3.7個。