晩夏に捧ぐー成風堂書店事件メモ(出張編) 大崎梢

 短編だと思って手に取ったら実は長編でした。大崎さんの長編は「片耳
うさぎ」で挫折経験があるので心してとりかかりました。

 ある書店の幽霊騒動の謎を解くために招聘された杏子と多絵。幽霊と聞
いて周囲の人達には思い当たる事がある、いわくつきの書店だった様で...。


 軽く読める日常の謎系だと思っていた成風堂シリーズ。今回も実際に作
中で起こるのは幽霊騒動と不法侵入だけど、過去の殺人事件が関わって来
ます。さすがに過去の物語は重いけれど、証言を集めるのも何十年もの時
間を経て思い出語りの粋に入っており、凄惨さは薄まっているので成風堂
探偵多絵のほんわか淡々とした雰囲気とも自然に馴染んでいます。

 多絵の書くメモがなんだかわかりにくいけど興味を引いて面白い。全般
的には楽しめたけれど、やっぱり中盤で失速、挫折の危機感を味わいまし
た。大崎さんは短編の方が上手いと思う。

 星3.7個。