粘膜蜥蜴 飴村行

 はうああああああっっ!す、凄いものを読んでしまった!

 うすうす皆様も気付いてはおりましょうが、わたくし読書に癒しは求め
ておりません。ピリリと辛口スパイシィでガツンと毒の効いたとびっきり
のイッちゃってる火傷しそうなあっつあつの文学を日々求めているのです。
本書は久しぶりの大当たりでした~~!!

 病院長の一人息子我が儘放題の雪麻呂ぼっちゃんも友人真樹夫も少年が
三人出て来たら一人はコレ系だよね、のお約束なキャラ大吉もなにやら面
白そうな奴らではありますが、江戸弁の爬虫人の下男富蔵の魅力から目が
離せません。「いいんでやんすよ、(中略)あっしの顔が不思議で仕方が
ねぇんでしょ、好きなだけ見て下さいやし」だって!富蔵萌え~!

 と、ノリノリで読み進めたら第弐章、いきなり戦地での真樹夫の兄の物
語となってしまい、しら菊愛しの富蔵出て来ません。なーんだ、でもきっ
と第参章へ続く重要なパートなのだろうな。蜥蜴野郎がきょぴちゅるきょ
ぴちゅる。とこの章はこの章でそれなりに楽しみつつ読み進め...。

 で、続く第参章、結末に向けて物語はスピードアップの急展開。愛しの
富蔵の「フレフレぼっちゃん、フレフレぼっちゃん、ナイスボーイの憎い
奴」デデデデデ(でんでん太鼓)にもんどりうって大爆笑。なんだこれ!
飴村行って何者だ!?この人凄すぎ!夢野久作の再来?

 平山夢明を読んだ時も相当イッちゃってる、と思ったけれど、作品は強
烈でも作者はそれなりに常識人な感じがしました。トンデモなくても展開
にはきちんと筋道があるというか。でも、この人は話がどっちへ転がるの
か、横っちょから何が飛んで来るのかわからない、広げた風呂敷畳みきれ
るのか!とドキドキする危うさがたまらない。

 最初主人公かと思った真樹夫がどんどん影が薄くなってしまうとか細か
い難はあるけれど、そんな些細な欠点を吹き飛ばすパワーがあるのよ!こ
ういう押しの強さを私は求めていたのです!トンデモなくて意外な余韻の
ラストを読んでからふりかえると「フレフレぼっちゃん」デデデデデ、が
更に感慨深い。あー、いいかな、いっちゃうよ。出しちゃうよ、高得点。

 星4.2個。さ~あ皆さん、ご一緒に!フレフレぼっちゃん!

→2012.4追記 その後刊行された粘膜作品たちとトータル評価で現在本書は
星5個にアップしています。