数学的帰納の殺人 草上仁

 数式や図形バリバリの硬派な理系ミステリが読みたいな〜、と思って手
に取りましたが、それほど図形は出て来ませんでした。^^;

 かの事件以来嫌と言う程色々な人が書いて来たカルトもの。主人公の友
人が信者で、という設定なのに読んでいるうちに皆信者に見えてくる。誰
が信者で誰が非信者なのか。その疑心暗鬼が面白い。

 数学的と言う点ではある命題をひたすらこねまわしている感じで、ロジ
カルな話になるとむしろ国語的。数学って考えることを楽しむ学問で、思
考し、それを議論するには言葉を使うのでロジックパズルをずーっと考え
ているとどんどん数学的じゃなくなってくる気がする。言葉のあや、とか
詭弁とか、言葉が重要になってくる。そういう意味では数学が苦手な文系
の人でも読み易いミステリなのでは。

 カルトものというのは動機、あるいは筋立てに必要な突飛な行動、不自
然な事象等の様々なことを「信仰心」や「妄信」で片付けることが出来る
のでミステリのネタとしては非常に便利なのだなあ。

 星3.6個。