ダブル・ジョーカー 柳広司

 相変わらずのクールなスパイ小説っぷりにしびれた...。

 前作がお気に召した人達必読の第二弾。内部からではなく、外側から見
たD機関が描かれています。

 せっかく前作であれだけのセールスをたたき出したのにこんなに地味な
続編を書いちゃって、よく角川がゴーサインを出したなー、と思いました。
出版社側としては結城がバリバリ出て来てじゃんじゃん活躍するものを出
した方が儲かりそうだもの。

 でもね、この地味さは凄いです。印象的で派手にするのは簡単だと思う
けれどあえて地味に地味に攻めて来た柳さんはさすが。スパイたるものど
れだけ印象を消せるかが勝負。読んでいる最中も厚い雲に覆われているか
の様に見えそうで見えてこないD機関。読み終わった直後に思い返すとも
やがかかった様に顔や性格、ひととなりが思い浮かばない登場人物。これ
こそがスパイ小説のリアル。スパイの誰某が格好良かったー!誰某の活躍
が印象的!なんて思えるスパイの描き方では、嘘なのだ。

 そう考えると前作があれだけ売れたからこそこれだけ地味なものでも出
すことが出来た、ということなのかもしれない。

 星3.9個。