粘膜兄弟 飴村行

 前の二作に比べると随分骨格がしっかりした、という印象。その分勢い
が落ちたとか笑いがパワーダウンとかインパクトが弱いとか、マイナス面
の変化もあるけれど、それを補って余り有る完成度の上がりっぷり。私は
とても満足、堪能しました。

 全編通して兄弟が主人公なので感情移入し易くて良かったです。富蔵、
モモタの流れを継ぐ狂言廻しのへもやん。何故か今回は人間だ。笑。爬虫
人亀吉もかわいいし、ゆず子という大人の女が出て来るのも良い。

 第壱章は甘く切ないおバカで阿呆な兄弟の熱い純愛物語。第弐章はもは
やお約束とも言えるナムール戦線。(拷問付き)この構成が嬉しい。ああ、
なんでこんなにこの世界と出て来る生き物を愛しちゃうんだろう。不思議
な位愛おしいんだよぅ。

 とんでもなく阿呆だと思った兄弟がだんだんふつうに見えて来る不思議。
変わったのは彼らなのか、自分の価値観なのか。叙情的な余韻すら残すラ
ストもとても気に入りました。

 星3.8個。