妖女のねむり 泡坂妻夫

 何を読んでも頭に入ってこない時ってありませんか?出来るだけ読みや
すそうなものと思って手に取るものの、道尾君も駄目、島荘も北村さんも
倉阪さんも甘栗少年も駄目だったある夜。ふと手に取った泡坂さんはスル
スルと内容が頭に入って来たのです。

 表紙からして古くさい上に、列車で乗り合わせた若い女性が「貴方は私
の運命の人」と言って主人公とその日のうちにベッドイン!!というなん
じゃそのメンズドリーム!な展開で少々鼻白んだものの、輪廻転生という
現象とミステリ、そして樋口一葉ボッティチェルリ等の文化芸術モチー
フをうまく絡めたなかなか面白い作品でした。

 女性の顔のリアルなエアブラシイラスト系の表紙にメンズドリームなエ
ピソードというのは古めのミステリには結構ありますが、この頃はミステ
リのターゲットといえば男性だったということなのでしょうねえ...。

 何故本書がスルスル読めたのか、ですが、もしかしたら私はいまどきの
日本語に食傷気味だったのかもしれません。言語ってほんの数十年でとて
も変わるなあ、と今回本書を読んでいて思いました。そういう時って古い
ものか翻訳物なんかが薬になる。読書が生活の一部になっている本読みに
は「読まない」っていう選択肢がないんだよなあ、と苦笑しました。

 星3.6個。