建築屍材 門前典之

 作者は建築業界の人なのですね。壁に死体を塗り込めて隠すというどこ
かで見た様な隠匿方法は不可能だ、という説明はなるほど納得しました。
いやあ、でもアレはね、アレで面白かったんだよ。まあ、古いネタはさて
おき、その他にもややこしい建築用語が出るわ出るわ。相当コレで挫折者
を産んでいるのでは。私は先日読んだ「屍の命題」で図面スルーするべか
らず、と学んだので注意深く図面も参照しながら、専門用語も頭の中でひ
とつひとつ咀嚼しながら読みました。

 死体隠匿方法は想像すると食欲減退ですが強烈で面白いと思いました。
全てがその強烈な方法ありきで他の部分は後付けっぽく、細かく作ってあ
る割にはトリック一発モノに感じます。謎解きはおなじみ蜘蛛手探偵。助
手として3人の若者がつきまして、これ3人必要かと言われれば犯人の退路
を何カ所かで見張るために必要なのですが、物語的には中途半端な出番の
量でうろちょろしている彼らの存在が微妙でした。

 星3.3個。