ミステリ魂。校歌斉唱! メフィスト学園

 目次を見て嫌な予感がしたんですよー。浦賀和弘の『三大欲求(無修正
版)』と矢野龍王だもん。でも三雲岳斗が読みたくて、短編集とかアンソ
ジーとかの一話だけ読む、というのが出来ない律儀なタチなので全部読
みました。

?H3>無貌の王国 三雲岳斗

 期待を裏切らぬ面白さ。謎解きもキャラクタも良いし、殺伐とした中に
少しの安堵があるラストも巧い。三雲さんは今後も要注目。

?H3>≪せうえうか≫の秘密 乾くるみ

 丁寧に作り込まれた暗号もの。暗号に込められた思いと背景の哀しさが
素晴らしい。クオリティは高いとても良い作品だけれど、一気に読まない
と挫折しそう。暗号ものって難しい練られた暗号であればある程小説とし
ては退屈になっていくんだよなあ。暗号の謎解き部分を読者に魅せるって
難しいのだ。それは乾さんのせいではなく暗号ものの持つ宿命。


 石持さんは短編の方が良いな。謎解きはミステリ入門編な難易度だけれ
ど、面白かった。背中がムズムズする変なキャラが出て来ないのも良い。
マイナスな部分がないからといってそれを褒めるっていうのもちょっと違
う気がするけれど。戦時中の設定だけれど、物語世界はどうも現代っぽい。
もし現代が戦時中だったら、という設定なのかな。

?H3>三大欲求(無修正版) 浦賀和宏

 タイトルからおおかた皆さんが予測している通りです。ミステリという
よりはショートショート界にありそうな一発ネタで、それをお得意のオタ
妄想で引き延ばした感。最後「あはー、そうきたか」という落ちはあるけ
れど、同時に(そのネタのために延々とこれか...。)と思っちゃうのよ。

?H3>三猿ゲーム 矢野龍王

 ああ、なるほど。そうきたかっ!図解でタネ明かしされているけれど、
普通に文章で説明しても良かったと思う。2ページ割く程の図ではない。
こういう図はソブケンにまかせようそうしよう。矢野さんのコレ系もこ
のくらいのページ数でズバっと終わってくれると良いね。なかなか楽し
めました。


 ラストの二作品が物議を醸すとは思うのですが、どちらもそれほど悪
くなかった。というか、想定以上でもない代わりに以下でもないという
ところ。デビュー作以来のお久しぶりだった矢野さんも「あー、はいは
い。矢野さんはやっぱりコレ系なんだね」とすぐその世界観を受け止め
られた。いきなり読んだら地雷でも心の準備さえ出来ていればオッケー
なのだ。早見江堂と一緒ね。^^(なんだその結論)

 星3.7個。