黒祠の島 小野不由美

 夏だからホラーでしょ、と小野さんの「屍鬼」を図書館で探したら貸し
出し中で予約まで入ってた。皆考えることは一緒だね、と開架にあった本
書を借りて来ましたが、怖くなかったよ!あらら、こっちはホラーじゃな
くてミステリなのね。

 失踪した仕事仲間を探して単身夜叉島に乗り込む主人公。今となっては
メインの謎は割と序盤でズバっと解っちゃいますが発売当時だったら解っ
たかどうか微妙な難易度か。

 あの存在について終盤までほとんど深く考察せずに読んでいた自分を発
見し、驚きました。気付かなかったのではなく、考えることをあえて避け
ていた様な気がする。それはまさに禁忌という感覚なのではないか。「世
の中には不思議なことなど何もないのだよ関口君」が座右の銘の科学の子
を自称する私に旧弊的な島の宗教がらみの禁忌という感覚を呼び起こした
小野さんの筆は凄いと思いました。

 閉鎖的でよそ者には口を開かない島の人達が中盤以降協力的にべらべら
喋る様になるのはいただけないけど、明かしてくれないと話が進まないし
なあ。それと登場人物一覧がないのが辛い。島の人似た様な名前多いし。
なんであれって要らない作品にはついてるくせに本当に必要な作品につい
てないのよ。

 星4個。