グランド・ミステリー 奥泉光

 おおお!奥泉文学だあああ。

 堪能しました。面白かった。ミステリやエンタメ寄りの小説は大抵起承
転結がそのものズバリ説明されていますが、奥泉さんは本筋に関係あるん
だかないんだか解らないエピソードを延々と読んでいると、その集積から
内容が徐々に浮かび上がってくるという文学系。満足感が高いです。ダラ
リと長いセンテンスも慣れると快感でずるずると止め時が解らず読み続け
てしまいました。

 加多瀬と志津子の物語も、範子の結婚話も彦坂の動向も細かいエピソー
ドの数々はそこだけ抽出しても面白く本筋が見えて来ない段階でも退屈す
ることはありませんでした。

 で、やはり読みどころは後半、物語が混沌と解らなくなってくるあたり。
一般的にミステリはラストでスッキリするものが良いものとされていると
思うのですが私は昔から振り回されてケムにまかれた感のある小説が好き
なので、混沌としてくるとワクワクします。終わり方もいいわー。文学で
ありミステリSFでもあり、戦記物でもあり、戦時中のある若い女性の物語
でもあり、楽しみ方は色々。

 ロンギヌスが出て来なくてちょっと残念。

 星4.3個。