鷺と雪 北村薫

 素晴らしいものを読んだ!満たされました。みなまで書かないこの粋な
終わり方はどうよ!

 北村さんの筆の凄いなあ、と思うところは自分の疎い分野の事柄を興味
深く読ませてくれること。お能か、わかんないから飛ばし読みしちゃえ、
ではなくつい引き込まれて読んでしまうし、お能を観てみたい!と思わさ
れる。

 『鷺と雪』のラストはドキリとしました。そうか。こういうことか。
しんしんと降り積む雪のあの夜静かに進む計画。背筋がゾクリとする緊張
感。平成の世でエアコンの効いた部屋でパソコンを前にしながらも、私は
この作品を読んでいる間確かにあの時代の匂いをかいで、あの時代の空気
を吸った気がしたのです。

 この後の激動の時代を経て、英子がどう成長するのか気になるけれど、
このシリーズはここで終わり。終わりなんですよね。英子がこのあと良い
所の奥様になるのか職業婦人になるのか肝っ玉母さんになるのか、英子は
私たち読者の心の中に人それぞれの様々な形で存在し続けるのでしょう。

 星4.3個。