記録の中の殺人 石崎幸二

 割と文句を言いがちなのですがつい読んでしまう作家さんが三名。石持さんと
海堂さんとこの人、石崎さんです。おなじみ、例のシリーズ。今までで一番ひっ
かからずに読めたし面白かったです。良いんじゃないかな、これ。相変わらずミ
リとユリアだかミリアとユリだか私には覚えられませんが。

 ミキサー事件と島での殺人事件、どちらも犯人が誰か、どうやって事に及んだ
のかよりは動機に重きがおかれています。どちらの動機も練られていて面白く読
めました。

 ラストシーンは他の作家さんが書いたらスペクタクルで派手な印象を残しそう
だけど、ほんの数行であまりにもさらりとしすぎ。勿体ない。でもこれが石崎節
かなー。ここでいきなりスペクタクル来ても違和感あるか?

 何カ所か登場人物達も読者も疑問に思う点を「それは誰にもわからないのだ」
「知る由もない」的な記述で済ませているのが気になりました。成り行き上登場
人物達がわからなくても作者がわかっていれば問題ないけれど、たぶん作者もわ
かってない(そこまで設定を詰めてない)だろうと思われるので、それは手抜き
じゃないの?と突っ込みたくなります。書かれない部分もきちんと作者の脳内に
は存在していないとリアリティが出ないのではないかと思うのよ。

 星3.7個。

 タイトルと装丁があまり内容としっくり来ていない気がしました。何年か後に
この本を見かけてもそこからは内容を思い出せないだろうなー。