進駐軍の命により 辻真先

 以前から興味が有り関連本も買っていながら積ん読になっていた下山事件
漫画ビリーバットを読んでにわかに興味が再燃し、昨年何冊か関連書籍を読み
ました。そんな中で今年たまたま手に取った本書、下山事件をモチーフに辻先
生がミステリを書いていたなんて知らなかった!

 復員兵勇悟は姉の死の謎を負ううちに下山事件に巻き込まれる。進駐軍専用
列車「ヤンキー・リミ テッド」は事件にどう関わって来るのか...。

 興味がある題材なだけに大変面白く最後まで一気に読めました。姉の事件の
真相や犯人よりも下山事件の方がずっと強烈で印象的。そりゃあ松本清張をは
じめとして大勢の人が興味を持つ歴史的怪事件だものなあ。下山事件を語る際
には死後轢断か生体轢断かという点が必ず争点となるのだけれど、それについ
て主人公と酒場で出会うある人物(誰もが知っている某有名人が登場します)
が展開する一つの推理はとても納得のゆくものでした。

 それにしても戦争って悲しいですね。戦争ものを読むと必ず襲って来るこの
むなしさ。沢山の命が天災ではなく人為によって一瞬にして失われるなんて、
絶対そんなことはあってはならない。私より若い世代は戦争体験者を直接知ら
ない世代になってくるので、平気で戦争をネタにして冗談を言ったりする。そ
の恐ろしさ、軽々しく冗談にしてはいけないことだということ、きちんと語り
継がないといけないと最近強く思います。