十三の黒い椅子 倉阪鬼一郎

 倉阪作品ではもはやおなじみとなった手法が盛り込まれ、更なる趣向も楽し
める意欲作。例の手法はもしかしたら本作あたりからスタートしたのかな?

 凝ってるし落ちまで頑張れば面白いんだけどそこまでがやはりね。トリック
のためのそれほど面白くない物語をどう自分を納得させて読み進めるか、これ
はミステリ読みの超えなければいけない大きな壁なのか。それでも地の文(と
いうか作中作と作中作の間の部分)は流れがあるので面白いけど作中作はどれ
も辛かった。伏線があるだろうけれどもういいや!とやけっぱちな気分で斜め
読みしてしまったものも。ああ、だから最近の倉阪作品こっちサイドは皆ペー
ジ数が少なくなってるのか。

 更なる趣向の部分ですが、こういう方向性は文体に色気がある人の方が好み
だなあ。クラッと来る様な幻惑感が残念ながら薄いです。

 星3.5個。