ボディ・メッセージ 安萬純一

 面白かった!これは当たりだ。一気にぐわっと読めました。

 日本人が外国を舞台に外国人を主人公にして書くのって難しいんです。不自然
に翻訳調な文体になってしまったり何かムズムズする様な座りの悪さがあったり
するものが多い。本作はそれほど気にならずに読めました。狭い日本を舞台にし
ては成立しないという理由もきちんとあります。

 ネタは中級以上のミステリ読みなら序盤で割れるレベル。それでも飽きずに最
後まで読ませます。小説として、読み物として面白いんだ。これ大事。ミステリ
はトリックの驚きとか伏線の張り方とか探偵が真相に気付く理由とか、盛り込ま
なければいけないポイント、守らなければいけないルールが沢山あるため、根本
的な面白さが薄くなってしまうものが結構ある。これ、凄いのはわかるけど読ん
でてオモロないねん!っていう。その点本書は読む手を止めさせない物語の運び
が良かったです。選評で山田正紀氏が褒めてるアレとアレもすごく良いね~!

 難点は探偵の陰が薄い。せっかくものものしく登場する変わった名前の探偵な
のに。(名前が変わっていると面白キャラなんじゃないかと期待してしまう)こ
れ別にピートを登場させなくてもディーが最後まで謎解きしても良かったんじゃ
ない?もしかしたらシリーズ化されて以降の作品でもっと活躍するのかもしれな
いけど。それと犯人。無理にあの人にする必要なかったんじゃないかなー。

 あとね、タイトルが如何ともし難い。応募時は『ボディ・メタ』だったらしい
けどメタであろうがメッセージであろうが「鮎川哲也賞受賞作」という冠がなけ
れば手に取りません。タイトルは大事よぉ~。

 星3.8個。