太陽が死んだ夜 月原渉

 先日感想を書いた『ボディ・メッセージ』と鮎川哲也賞を同時受賞した作品。
この回はレベル高かったね。どちらも良く出来ていて面白かった。

 第二次世界大戦ニュージーランド捕虜収容所での日本兵の死と全寮制のミッ
ションスクールでの女子生徒の死、そして41年後同じ女子校で再び起こる惨劇。

 奇しくもこちらも『ボディ・メッセージ』と同じく外国が舞台。読み始めた時
は、デビュー作とは思えぬ手慣れた文体だと感心したのですが、読み終わってみ
るとその手慣れた感が凶と出ちゃったたなあ、と。捕虜収容所も戦時中の女子校
も現代パートも読み易いのだけれど皆同じイマドキな雰囲気。器用にサラリと書
き流した風。時代とか戦争の空気感が薄いのだ。

 この作品は皆が一定以上のレベルだよね、巧いよね、と認めるけれどすごく好
き!という人は少ないのではないか。優等生がソツなく纏めた作品という感じ。
多少の破綻があってもいい。もっと勢いのある作品が読みたいです、私は。

 星3.7個。