空想オルガン 初野晴

 おなじみハルタとチカが日常の謎に挑みつつ吹奏楽部でコンクールを目指し、
草壁先生を狙う(まとめすぎ)ハルチカシリーズが早くも3作目となりました。

 ひとつひとつの作品の、そして連作短編集としてのミステリ的、小説的満足度
は上々。特に『ヴァナキュラー・モダニズム』の真相と、あの人の正体にはびっ
くり。私は初野さんのダークサイドが好きなので、表題作『空想オルガン』の様
な重めのテーマも好みでした。

 が、だんだんこのシリーズ、ハルチカと先生の存在感が薄くなってないか?別
にこのシリーズでなきゃ、っていうネタでもないというか。物語の筋とハルチカ
及び吹奏楽部の物語が乖離しちゃってるのね。それぞれ離れた所で別個に進んで
る様に思える。この吹奏楽部の物語、無理してミステリ仕立てにしなくても良く
ない?青春小説は青春小説で、ミステリは別のシリーズで書く、と。それを言っ
たら元も子もないか。

 星3.7個。