命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇'75 古野まほろ

 警察小説であっても、スピリットは本格なのです。

 平成本格の申し子(勝手に命名古野まほろの新刊は警察小説だと言う。えー
大丈夫かいな、と気乗りせずに読みましたが、とっても面白かった!『群衆リド
ル』よりノレたわ。

 おなじみ二条氏が新人だった頃のお話。なんとテーマが学生運動学生運動
て中途半端に最近のことなので、学問として、歴史として学んでいない分、第二
次世界大戦よりも私には遠くピンと来ない事象なんです。お上に逆らうことを知
らない骨抜き世代にはあのエネルギーがどこから産まれたのか全く理解出来ない
し同じ国でたかだか数十年産まれた時期が違うだけだとは思えない程彼らの心の
うちは遠いんだよなあ...。

 と、まあ、テーマや警察というモチーフには若干退き気味だったものの、謎解
き自体はまっことまほろ!遠く感じた犯人の心、最後にはしっかりと理解出来、
納得。鮮やかに美しく回収されてゆく伏線と重く切ない物語に酔いました。そう。
まほろは酔えるんだよ。私は酔える文学が好きなんだよ!大満足。

 星4個。