名探偵に薔薇を 城平京

 こ、こ、こ、これは面白かった!なんで鮎川哲也賞逃したの?この年の受賞は
何だったんだ?あー、『未明の悪夢』か。私は本書の方が好きだけどな...。

 これ続編出てないの?勿体ないなあ。魅力的で良い探偵なのに。いかにもなベ
タなキャラなんだけど全然それが嫌じゃないのね。あ、またこのテの探偵か、と
白けさせないところが凄い。

 作中に出て来る童話『メルヘン小人地獄』に秒殺でノックアウトされました。
たまらん!「こーの世でいーちばんすごい毒、ほい!」「小人を入れよう小人の
脳を。これが秘伝の隠し味!」ここまで読んで傑作を確信。

 久作チックな童話のスパイスは勿論、謎解きも面白い。痕跡を全く残さない完
全犯罪が可能な毒を何故犯人は誰の目にもつく程大々的に投入したのか、という
謎がまず気になるし、一部と二部の構成も良く考えられて練られている!動機も
深い。気障なタイトルもこの探偵に合ってる!探偵の抱える苦悩も効果的。納得
いかないのは本書が鮎川哲也賞を取らなかったことだけ。

 星4.2個。