スリープ 乾くるみ

 あああ、全然見破れなかった!そういうことか!どうにもこうにもつじつま
の合わない展開に、まさかの夢落ちか?と疑ってました。そりゃあないよね、
乾さんごめ~ん。^^;面白かったです。夢落ちじゃありませんので皆様ご安
心を。

 平成叙述の雄、乾くるみの近未来SF。どんでん返しにたどりつくまでが退屈
なことで定評のある(私的にね)乾さんですが、これはなかなか面白かった。
2010年の刊行だけれど、大震災が起こったり、自然回帰をうたう宗教団体が出
て来たり、鋭くかつ興味深い近未来像に飽きることなく最後まで読めました。
中途半端な恋愛描写が読んでいて邪魔なことを覗けば満足...。

 人間を冷凍して未来に解凍するっていうネタはSFでも割と定番かと思うのだ
けれど、私は結局人類はそれをなし得ないと思っています。技術的にそこまで
の進歩の可能性はあっても、そこへ到達する前に人類は核の暴走や自然破壊の
影響で自らを滅ぼすと思う。その自滅への進行を止めようとすると、本書に出
て来た宗教団体じゃないけれど、農業とか自然回帰の方向に予算や人間の興味
が割かれる様になって、人間冷凍や宇宙開発の様な方面の進歩は緩やかになる
と思うのでどちらにせよ実現しないだろうなあ、って。

 星3.8個。