痾 麻耶雄嵩

 さて。いよいよ「痾」です。烏有さん大忙し。大活躍じゃないで
すか。って放火でか!そうそう。放火って罪が重いんですよね。

 これはミステリというよりはシリーズものの小説の一部。前二作
を読んで無い人はごめんなさい。さようなら。ですね。

 私自身もトリックや伏線がどうの、じゃなくって烏有はどこへ辿
り着くのか、メルは何を伝えたかったのか、桐璃と烏有の関係は進
展するのか、とそういう観点で楽しんでしまいました。

 哀しい物語です。わぴ子も巫女神も桐璃も哀しいし、この後の
「翼ある闇」で起る事を予期していたと思われるメルも、「もう慣
れた」と連呼する烏有も実に哀しい。読んだ後しばらくその寂寥感
が抜けませんでした。そういう余韻を描き出せるというのは彼の才
能だと思います。きちんと論理的に解決されるトリックを楽しみた
いミステリファンは本投げ付けちゃうかもしれないけど、私はこう
いう世界好きですね。タイトルも良いです。
星3.8個。(中途半端かな?なんか4弱って感じです。)

 ちなみに本書に凡河内躬恒の歌が出てきますが、私の名前「しら
菊」はこの歌からとっています。百人一首の中で一番好きな歌なの
で出てきて嬉しかった...。