二人道成寺 近藤史恵

 冒頭で「接州合邦辻」の一節が出てくるのでもっとヘヴィでドロ
ドロしているのかと思いましたが、以外とさっぱりしていました。

 歌舞伎好きにはディティールが楽しいです。演目や役名が沢山出
て来ます。しかもメインになっている「接州合邦辻」は大好きな演
目なんです。菊五郎の玉手を観ましたが、亀治郎の玉手が観たいと
です。(切実)数年前亀治郎の会で演ったのを見逃したとです。
(痛恨)

 話がそれました。「玉手御前は俊徳丸のことを本当に愛していた
と思いますか?」という問いかけは登場人物と一緒になって真剣に
悩んでしまいました。

 哀しい動機の物語だけど、後味の悪い哀しさではありません。し
みじみと切なくなります。

 「そういえば最近歌舞観てないなあ。」と、ふと木挽町にトリッ
プしたくなった時に読みたい一冊。ただ、派手なトリックや立ち回
りもないので歌舞伎に興味がない人は退屈だろうなあ。

 星3.5個。