聖女の遺骨求む エリス・ピーターズ

 ここ数年翻訳ものをあまり読んでいなかったので忘れてました、この感
覚。小説を読む楽しみの一つとして、現代ではない外国、日常から切り離
された異世界にトリップする面白さがあったのでした。しろねこさんお勧
めの中世の修道士カドフェルシリーズです。

 ミステリなんだけど、トリックや物語がなくとも、その世界観や登場人
物達の会話を楽しめる作品が好きです。それプラストリックも面白ければ
言う事なし。本書もまずその時代と社会が興味深い。宗教観が根底にある
登場人物達なので思いもよらない方向に話が進んだり、おいおい、それ、
信じちゃうの?ってことがあったり。

 カラマーゾフを読んだ時にも気になったのですが、宗教のいわゆる「奇
跡」ってやつ。あれは「起こり得ないことを信じる」ことが信仰のために
必要だというお約束的な意味合いのことだと私は思っていたのですが、も
しかして、ガチで信じてらっしゃるのでしょうか..。そうだよなあ、信じ
ていたからこそアリョーシャもあれだけ悩んだんだよなあ。なんてことを
思っていたら...!あれ、あら、まあ!

 カドフェルのこの解決の仕方!いいですねえ〜!探偵というよりは、裁
きというか、修道士ならではの憑き物落としというか。ハッとしました。
しびれる。読後感もいいです。

 星4個。