ダブルダウン勘繰郎 西尾維新

 やってくれますねえ。西尾維新。本書はいろんな仕掛けがあって
面白かったです。清涼院流水氏へのオマージュあり、ミステリ的ト
リックあり、多少のバイオレンスや駆け引きあり。探偵論あり。
 「連続名探偵殺戮事件」の犯人逆島あやめ。潜伏していた彼女が
腹心椎塚鳥籠とともに「天国に沈めばいいのよ。探偵なんて」とJD
C(日本探偵倶楽部)のビル爆破を計画して再起動。

 探偵志望者の勘繰郎と元探偵志望者のむつみはこの悪しき計画を
阻止出来るのか...。
 勘繰郎が不思議ちゃんです。小説でも漫画でも不思議ちゃんに振
り回される常識人という構図はよくあって、下手な人の描く不思議
ちゃんには腹が立つものですが、勘繰郎はなかなか魅力的。「ちょっ
と位振り回されても良いわ〜。」と思えてしまう。突拍子もない言
動のようでいて、正しい事をいっぱい言っています。夢を忘れかけ
た大人が読むとグサリグサリと勘繰郎の台詞が突き刺さって来ます。

 西尾氏は若くして成功されましたから、友人知人から「おまえは
いいよなー。夢がかなって。」等と無責任な羨みなんだかやっかみ
なんだかわからない台詞をよく言われるのではないかと思います。
そこからこの数々の勘繰郎の名台詞が生まれたのではないでしょう
か。私には勘繰郎の言葉は西尾氏が周囲の人間に言いたいことの様
に思えました。

 「うにー」も良いけどこちらも是非。星4つ。