狩野俊介の肖像 太田忠司

 まだまだマイブームは続いております、太田忠司強化月間。

 今まで何冊かの狩野俊介シリーズを読んで来て彼の色々な側面を見て来
たつもりだったけれど本書ではまた新しい一面が。野上さんもアキちゃん
も知らない学校での俊介君はびっくりする程大人しく、また、その大人し
い理由が見えて来るにつれ、読者は俊介少年から目が離せなくなってしま
う。

 どの謎も面白いけれど、四話目はこのシリーズで俊介少年を成長させる
ために重要な意味を持つ物語。諭されているのは俊介君なのに良い大人の
私でも「うん、そうよね〜」としみじみ老人の語りに引込まれた。それま
での三話が学校を舞台としていたのに対し、この物語は幻想的で叙情的な
ストーリー展開で意表をつかれました。じんわり。

 星3.9個。