街の灯 北村薫

 良い!とっっっっても良いですね、このシリーズ!

 昭和初期のお嬢英子とお抱え運転手ベッキーさんの連作短編。黙ってい
ても蝶よ花よと扱われ何不自由なく暮らせるであろう英子がわざわざ謎に
突進してゆくのが面白い。

 そして英子を謎解決に導くベッキーさんの格好良いこと!頭脳戦だけで
はなく射撃や武道もお強い様子。さらりと歌舞伎の台詞を引用したりと博
識だし、きちんと教育も受けたそこそこのおうちの出なのは想像に難くな
い。それがどういういきさつで運転手に?

 作品に流れる雰囲気がこれまた凄く良い。戦前の上流階級の暮らし向き
は全てがケタ違いで(ベッキーさんは英子の運転手なのですよ。父上の運
転手は他にいるのです)眩しく、庶民の自分には貧乏文学よりも感情移入
は難しいのではないかと思いきや、なぜかすんなり入って行ける。英子も
英子の兄や父もあっけらかんとしていて嫌みがなく憎めないのだ。これが
成り上がりじゃない生来のお金持ちってやつなのか。

 当時の銀座の描写がたっぷりで、銀座大好きな私は嬉しくなってしまい
ました。軽井沢に避暑に行くお話も入っているので今の時期読むのに最適
ですね。^^

 三部作なので残り一冊。早く読みたい様な、読んでしまうのが勿体ない
様な、複雑な気分にさせるシリーズです。

 星4.2個。